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第7章

しかし、ランニングは村上にとってそれ以上の意味があります。小説家の仕事は物語を伝えることなので、心の奥深くまで探ることが求められます。物語が大きいほど、その探索は深くなります。しかし、心の奥底には、さまざまな予期せぬ暗黒の場所があります。小説家たちは、自分自身の心を脅かす可能性があるそんなゾーンをさまよいます。彼らの精神は、それに絶えず向き合うためにできるだけタフでなければなりません。強い精神の前提として強い体が必要であるため、村上は小説家が体力を維持することを重視しています。

健康的なライフスタイルを築くことに加え、村上春樹は小説を執筆する際には決まったルーティンを採用しています。まず、デスクを掃除・整理し、「執筆に集中する」という態度で座ります。疲れていても、気分を変えるために翻訳作業を行うだけです。1日に400文字分の10ページを完成させると決めています。さらに、インスピレーションが溢れていても、10ページだけを書くことにしています。全く書きたくない日でも、自分に10ページを書かせます。これは、彼が長期間の仕事について定期的にやることを重要視しているからです。気分が良いときに多く書いて、困難を抱えているときに止めると、規律が守られなくなってしまいます。

村上が長編小説を書くときは、あらかじめプランを立てません。彼の心がどこにたどり着くかに自由にペンを走らせます。その結果、小説は矛盾が生じます。そこで初稿が終わった後、彼はしばらく休んでから第1次の編集に取り掛かります。矛盾が起こる部分をすべて見直し、それを合理的で矛盾のない物語に変えます。そのプロセスが終わった後、彼はもう一週間休んでから第2回編集をスタートし段落regます。この回では、風景の描写や対話の調子の変化など、細部に焦点を当てています。また、分かりにくい部分を易しく理解できるように修正します。

この2回の編集を経て、村上は自分が進行中のすべての執筆作業を一時停止し、長い休憩に入ります。この休憩中、彼は作品を引き出しに入れ、2週間から1ヵ月もの間、この小説の存在を忘れてしまうことがあります。村上は、長編小説を書く際には、執筆中の時間も非常に重要であると同時に、執筆していない時間も重要であると考えています。後者の休暇期間は、心を落ち着かせるのに役立ちます。しばらくすると、最初には見えなかった欠陥が明
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